きょうの重力場
お勧め、という小説が、
伝説的な禁書、斜め読みをたくらむ俗物を寄せつけぬとも。
海の物とも山の物ともわからぬ、比喩と晦渋の垣根を張り巡らし、
点景的人物の巧みな描き方。
いにしえのインカ文明を後光のように背負い、
ロンドンの地図を塗りつぶしていくらしい。
コルトレーンとドルフィーが、延々と、
『青海波』をやっているような感じかね。
この書物の登場で、H・ミラー氏をして
「チョーサーよ、シェイクスピアよ、君たちは終わった」
たはは、そうなの?
ウサギに餌をやる時間が来てしまったので残念だ。
そこに白い大きな乗用車が停まった。
登場された6人の方々は、
時にはオーケストラの列にいる
タンノイと対極のリアリズム集団である。
―――嫌いな作曲家の演奏もあるのでしょうか?
「我々は、楽譜にある音符の再現に勉めるので、好きも嫌いもありません」
そのときタンノイで「くるま場草」が鳴って、
ウイーンフィルの緩急自在のゆらきがスポットライトのように移動していく。
音楽が一転、ジャズになると、
各位の概念や持論が、決壊したダムのように、
レスターヤングと宇野功芳氏のことや、
楽器の音色の好き嫌いであるとか、
琥珀色の液体と音楽が縦糸と横糸に編み込まれていった。
おそらくこれらが、
ニュートンやアインシュタインのいう
時空の歪みにおける重力場の昇華という、
定理の談笑かな。
しまった、読んだものが移ってしまった。
きょうから7月である。
