立春、夜明けのマイルス

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熟睡している丑三つの刻に、親に命じられ遊びに行っていた家で、
「さあ、起きて」と起こされた。
中学生であったかの当方が眠い目をこすると、大きな男がゴム製のダブダブの服をよこして着せてくれたが、ゴム合羽が歩いているようにして夜道を港に降りて行った。
五隻ほどの船が、出港の準備で、薄暗い海にざわついていた。
はじめてこちらに漁を経験させる船主は、波を分ける舳先にすっくと立って、遠く沖を見ている。
やがて船達は、くろい浮き玉の浮かんでいる仕掛網の周囲を取り囲むと、十数人がタイミングをそろえて声を発し網を手繰りあげはじめたが、最初に見えてきたのは、魚の背を別けて揃って網の中を泳ぐイカの群れである。
最近、三百キロの黒マグロが網にかかったニュースをテレビで見て、ふと遠い記憶を思い起こした。
最近のモーゼルワインが、カビネットでも非常に甘さと酸味のコントラストやコクが良く、少々のつもりでオルトフォンの針圧も指先に軽い。
漁の出港にも、雪の夜道のドライブにも似合って、タンノイのマイルスは鳴る。